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「第28回日本血栓止血学会学術会議」報告
開催日:11月24日(木)、25日(金)、会場:福岡国際会議場
日本血栓止血学会は血液学の中でも特に凝固系の分野の研究をしている学会です。

かつての血液凝固系医療者中心から、血栓症・DIC・炎症の医療者中心に移行しているようです。

今回の学会では、血友病治療に直接関係する発表数は少ないものの注目すべきものがいくつかありました。

 

会場となった福岡国際会議場の外観
【1】既に新聞報道されていますが「C型肝炎治療薬リバビリンが血友病患者の出血予防効果を持つ」という名古屋大学の発表。

対象者が8名と少ないのですが

①IFN単独治療時には予防効果は見られなかった
②第7因子因子活性が有意に上昇していた
③出血頻度・重症度の軽減がリバビリンをやめると消失していく
④IFN+リバビリンによる肝機能改善前から出血予防傾向が現れているので肝細胞改善によるものとは思えない、ゆえにリバビリン自体に出血予防効果があると考える・・といったものでした。

「リバビリンは溶血性貧血を引起す」「出血傾向は増悪するのでは」と言われているので、出血予防効果があると即断するのは早計だと思いました。
(リバビリンには、他にも催奇形性など深刻な副作用が数多くあります。現在は肝炎等で治療が不可欠な場合にのみ使われています。経口薬で出血予防の効果があるとすれば画期的ですが、副作用なども慎重に考慮し患者への十分な説明と同意を得る必要があるでしょう)。

【2】2003年度より国立病院・大学病院など特定機能病院ではこれまでの「出来高払い」から「診断群分類DPC点数表による包括払い」が導入されています。

2004年度血友病類縁疾患のDPCが検討された際、「入院7日までの1日の請求点数は12959点(つまり約13万円)」でした。
一見多額そうですが、血液製剤2000単位を打ってしまうと(薬価13万円近い)それだけで病院利益は無くなります。

つまり血友病の治療自体が危機に瀕することになります。

広島大学・兵庫医科大学・産業医科大学・国立福井など8施設の協力を得て調査した「日本の血友病患者の入院医療コストの集計」(対象患者のべ506名、のべ入院日数12143日)では

①施設別一日平均請求点数には大きなばらつきがあり、最小12411点、最大22208点だった
②患者の体重増に伴い請求額は増加(75kg.以上で5万点以上)
③インヒビターの有無では有意差あり(あると5万点以上)だが、手術の有無では有意差なし とういう結果が出たそうです。
「血友病治療はDPCによる包括払いには絶対なじまない」という医療者側からの強力なアピールを感じました。

【3】血友病インヒビター患者の止血管理・治療薬として、化学及血清療法研究所はFⅦa/FX混合製薬(まだ試験管試験)、中外製薬はFⅨa/抗FX bispecific抗体のFⅧ(第8凝固因子)代替作用の発表がありました。

基本的には第7・第9・第10因子の必要部を組み合わせて第8因子活性を補おうという薬だと思われます。
現状はノボセブンとファイバしかない状態で苦労しているインヒビター保有患者に朗報を早く届けて欲しいところですが、新薬については、その効能だけでなく、副作用・有害事象などもよく見極めたうえで、必要な患者に十分な説明をし、同意を得て利用していくようにしなければならないでしょう。

【4】血友病の遺伝子治療の進展ぶり 第8・第9因子は肝臓の細胞で作られています。
凝固因子の正常な遺伝子を体の細胞に入れて(遺伝子導入)作らせ、必要な凝固因子レベルを保たせようというのが血友病の遺伝子治療です。

現在自治医科大学の坂田先生らのチームが遺伝子治療開発に取り組んでおり、(改変型)カニクイザルを使って第9・第8因子遺伝子のアデノウイルス関連ウイルス(AAV)ベクター(運び屋)を試作しています。

第9因子に関してはマウスにおいて肝臓を標的にした導入実験系の構築、第8因子に関してはカニクイザル第8因子cDNAクローニングをしている段階。

「遺伝子治療の安全性を高めるためには、導入した遺伝子の過剰発現を抑制可能にし、かつ発がん性などがないベクター開発が大切」だからこそ、精緻かつ慎重にベクター開発を行っている姿勢が印象的でした。

他に「炎症と(DICに代表されるような)血液凝固系の問題は深く関連している」といった問題意識が学会として共有化されつつあるのが、興味深く感じました。  

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