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【医療者の安全感覚は―】「緊急報告 採血器具使い回し (上) 実態」

▽手軽な家庭用を安易使用
島根県益田市の診療所「おちハートクリニック」で5月21日、採血器具の針の使い回しが発覚したのを発端に、針ではないものの器具本体の使い回しが厚生労働省通知に反して他の医療機関でも行われていた実態が次々に明らかになっている。
島根県内では5月29日までの県調査などで57機関で判明した。
感染症防止や安全に敏感であるべき医療現場で、なぜ使い回しが続いていたのか。

▽危険性の認識薄く
「医療の安全の信頼を傷つけた」「配慮がなかった。
怠慢と言われても仕方がない」。
5月22日に開いた記者会見で「おちハートクリニック」の越智弘院長は力なく何度も謝罪の言葉を繰り返した。

クリニックで使い回されたのは糖尿病患者が自分で血糖値を測定するために使う採血器具。
ボタンを押すと先端の穴から針がほんの少し飛び出す。
指先を刺し、絞り出した血液を試験紙などに付けて測定機にかける。

6本の針を備えたカセットを装着し、使うたびに手動で新しい針に切り替えるが、クリニックでは針は自動交換されると勘違いし、同一針を約1ヶ月にわたって患者37人に使い回していた。

▽一部で常態化
針の使い回しが危険なのは肝炎など感染症のリスクだ。
37人の中にはB型、C型肝炎のウイルス保有者が一人ずついた。

血液やウイルス量などで単純比較はできないが、厚労省が医療従事者の針刺し事故について2003年に全国調査した結果によると、過去3年間で回答した893病院のうち、740病院で約1万4800件が発生。
47件でB型、C型肝炎の感染が確認されたという。

島根県医師会の湯原紀二糖尿病対策委員長は「感染の可能性はゼロではない以上、絶対にあってはならないことだ」と強調する。

クリニックの針の使い回しは、一部の医療機関では半ば常態化していた器具本体の使い回しの実態を明らかにした。
肌に触れる器具先端のキャップなど針の周辺部品が使い捨てでないタイプについて、厚労省は2年前、英国でB型肝炎感染との関係が疑われる事例が起きたとして、複数の患者に使用しないように通知していた。

▽診断早く重宝
しかし島根県の調査で他の病院、診療所で針は交換していたものの器具本体の使い回しが次々に判明した。
浜田市の3つの市国民健康保険診療所・出張所は厚労省通知を知らないまま診療や健康イベントなどで計86人に対して使った。
県立こころの医療センター(出雲市)も2004年7月以降、入院患者に使っていた。

今回問題となっているのは、そもそも糖尿病患者の家庭での使用を想定した簡易型の採血器具。
それがなぜ医療現場で使用されてきたのか。
「早く血糖値の診断がつくから重宝がられている」と湯原委員長。
糖尿病患者が家庭で使うための説明で使用された例も目立つ。
県立中央病院(出雲市)も含め、大規模病院にさえ厚労省通知が徹底されていない実態が浮かびあがった。

厚労省は今月末、全国調査に乗り出すことを決めた。
5月29日には島根県のほか、奈良、大阪、兵庫、徳島でも器具の使い回しが明らかになった。
影響は全国に広がってきた。

参考:採血器具
糖尿病患者の血糖値測定などに使う。
すべて使い捨て▽針と、キャップなど肌に触れる針の周辺部分が使い捨て▽針だけ使い捨て―のタイプがある。
厚生労働省は2006年3月、針以外の部分に付着した血液による肝炎などの感染が否定できないとして、針だけ交換するタイプを複数患者に使用しないよう求める通知を出した。

平成20年5月30日付「中国新聞 城戸収、和田木建史記者記事」から

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