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【医療者の安全感覚は―】「緊急報告 採血器具使い回し(下) 当惑」

▽「消毒で安全」現場反論 感染防止、認識にずれ
「注射針の採血に比べ痛みは少ないし、その場で血糖値がわかる。
健康を自覚してもらうのに絶好の器具なのに…」。
採血器具の使い回しが発覚した浜田市の市国民健康保険弥栄診療所の阿部顕治所長は頭を抱えた。

阿部所長は自ら実行委員長を務める町内の健康イベントで、この器具を使って血糖値測定に積極的に取り組んできた。
ただ、厚生労働省が複数の人に使わないよう通知したタイプの器具を、通知を知らないまま針を交換したものの本体を使い回した。
町内に「糖尿病友の会」も発足するなど糖尿病への意識を高めた器具は、皮肉にも危険視された。

▽「なぜ駄目か」
使い回し問題をめぐる当惑が医療現場に広がっている。
「適切に管理すれば感染症をほかの人に感染させる可能性は極めて低い」。
問題が判明した医療機関の多くは、厚生省通知への「不満」を飲み込んだ。
「疑わしきは使わず」という通知の趣旨とのギャップが浮かぶ。

それを物語るのが「消毒」だ。
問題発覚の発端となった益田氏の「おちハートクリニック」を除き、島根県の調査で複数患者への使い回しが判明した医療機関57のうち、56が器具本体を消毒して再利用していた。
針は交換し、器具も消毒しているのになぜ駄目なのか?。
調査の過程でこうした反論が県に相次いだ。

手術用具と同様の滅菌処理をしていた公立邑智病院(島根県邑南町)や、ウイルスなどの死滅を狙って消毒後1~2週間乾燥させ再利用していた松江赤十字病院(松江市)などのケースはあるが、大半はアルコール消毒だけ。
「注射する時の皮膚の消毒と同じような感覚」と公立雲南病院(雲南市)の医師は言う。

しかし、厚労省肝炎対策推進室は「C型肝炎ウイルスに対しては不明だが、B型は消毒アルコールでふき取っただけでは不十分」とする。
ふき取りによるウイルス減少は期待されるものの、アルコール消毒した採血針ではB型肝炎の感染事例が報告されている。
今回、問題となっている器具本体にも採血の際に微量の血液が付着する可能性がある。

▽複雑な責任
肝炎ウイルスに詳しい吉澤浩司・広島大学名誉教授も「アルコールですべてが減菌できないのは、イロハのイ」と医療現場の「常識を」を批判。
血液が付着する可能性がある器具はすべて使い捨てにする努力を医療現場や器具メーカーに求める。

「感染の恐れが100パーセントゼロを求める時代になったということ」と松江赤十字病院の秦公平院長。
人為的原因による感染症の拡大に危機感を抱く時代の要請を、厚労省通知に感じ取る。

吉澤名誉教授は、一連の問題は行政や医師、器具メーカーなどの複合的な責任と指摘する。
「それぞれの説明責任やアフターケアのあいまいさ、安全意識の甘さが積み重なった構造的な問題だ」。

感染症への危機感を共有し、人為的な感染をなくす環境をいかにつくりだすか。
採血器具使い回し問題からくみ取らねばならない課題は多い。

平成20年6月1日付「中国新聞 城戸収、和田木建史記者記事」から


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