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[「血液凝固因子製剤文献情報 N0.46」平成19年9月(財団法人血液製剤調査機構 血液凝固因子製剤委員会)]から

【血友病&インヒビター】
“調査対象366症例で、インヒビター発症87症例(24%)。
早い時期からの予防治療は、インヒビターの発症を抑制か”

タイトル:Treatment-related risk factors of inhibitor development in previously untreated patients with hemophilia A:the CANAL cohort study.
著者名:Gouw SC, van der Bom JG, Marijke van den Berg H.
雑誌名:Blood 109:4684-4654,2007

要旨:
CANAL研究(Concerted Action on Neutralizing Antibodies in severe hemophilia A)は、初回治療の重症血友病A患者における治療方法とインヒビター発症との関連を検討するものである。

この多施設後方視的研究は、1990年から2000年までに生まれた366症例を対象としている。
その結果、87症例(24%)においてインヒビターを発症し、その内69症例(19%)は高力価であった。
インヒビターの発症率は初回治療時の年齢と関連しており、生後1ヶ月以内に治療が開始された場合の発症例が41%であったのに対して、18ヶ月以降に治療された場合は18%であった。
しかし、治療強度を適合させてみたところ、この関連はほとんど消失した。
また、治療開始時期における手術歴や治療強度は、インヒビターの発症を増加させた。
一方、予防治療例においては、出血時治療例と比較して、インヒビター発症を60%低下させた。

以上、今までに指摘されてきたような初回治療時期が早いとインヒビター発症が高率になるという報告は、大部分は、早い時期に強力な治療があったかどうかに依存しているものと考えられた。
また、早い時期の予防治療は、インヒビターの発症を抑制するものと考えられた。

※ 治療薬による10-20%のインヒビター発症率から、インヒビター発症者の困難な治療と生活に対する健康被害に医薬品副作用救済基金適応を実施し、添付書にインヒビター発症などの警告等をしっかり載せる必要がある。


◇◇◇

【血友病&インヒビター】
“血漿由来第8因子濃縮製剤は、遺伝子組み換え第8因子濃縮製剤と比較して、明かにインヒビター発症率が低いということはなかったとの微妙な発表。
逆に、歴史の長い血漿由来製剤が新世代製剤に比べてインヒビター発症率で優位性があるともいえるのかもしれない”

タイトル:Rikombinant versus plasma-derived factor 8 products and the development of inhibitors in previously untreated patients with hemophilia A:the CANAL cohort study.
著者名:Gouw SC, van der Bom JG, van den Berg HM,et al.
雑誌名:Blood 109:4693-4697,2007

要旨:
血漿由来第8因子濃縮製剤は、遺伝子組み換え第8因子製剤よりもインヒビターの発症率が少ないのではないかという考え方があった。

著者らは、第8因子濃縮製剤のタイプや切り替え(変更)と、インヒビターの発症率との関連を検討した。
この多施設後方視的研究は、1990年から2000年までに生まれた初回治療の重症血友病A 316例を対象としている。

その結果、血漿由来第8因子濃縮製剤は、遺伝子組み換え第8因子濃縮製剤と比較して、明かにインヒビター発症率が低いということはなかった(相対リスク0.8(0.5-1.3))。
また、高力価インヒビター症例においては、なお発症率の差は不明瞭であった(相対リスク0.9(0.5-1.5))。
von Wliiebrand因子(vWF)を相当量含む製剤においても、遺伝子組み換え製剤と比較してインヒビター発症率は同等であった(相対リスク1.0(0.6-1.6))。
次ぎに、製剤を変更した場合もインヒビター発症率は不変であった。

以上、vWFを含む血漿由来製剤においてインヒビター発症が低率ということはなく、製剤の変更がインヒビター発症を高めるということもなかった。

※ 患者にとってインヒビターが発症したら、治療や生活で最悪ともいえる困難性が生じる。
新世代の製剤でもあると宣伝普及されている遺伝子組み換え製剤に、インヒビター発症の解消を視野に入れた開発がなかったのだろうか。
血漿由来製剤に同等近いということでは、お寒い話と考える。
開発には包括的な安全性、安定性が確保される必要がある。
遺伝子組み換え製剤は輸入製剤ばかりだが、認可した国はこの点、しっかり把握しての認可だったのか大きな懸念がある。


◇◇◇

#928
【血友病&インヒビター】
“重症血友病A患者の第8因子インヒビター発症は、重大な治療関連副作用と医療者として言及した画期的発表。
4つの遺伝子組み換え第8因子濃縮製剤使用236例の調査中、28%でインヒビター発症、高力価は18%。
インヒビター発症した患者の救済を早急に考えるべき”

タイトル:Treatment characteristics and the risk of inhibitor development:a multicenter cohort study among previously patients with severe hemophilia.
著者名:Gouw SC, VAN DEN Berg HM, VAN DER Bom JG,et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 5 :1383-1390,2007

要旨:
重症血友病A患者において、8因子インヒビターの発症は、重大な治療関連副作用である。

著者らは、初回治療の重症血友病A患者を対象に、インヒビターを発症させやすい治療背景を検討した。

方法は、1989年から2001年までに行われた、4つの遺伝子組み換え第8因子濃縮製剤を用いた臨床研究をまとめて解析している。
その中で、初回治療の重症血友病Aの236例(製剤による治療が50日以上なされた症例)が解析対象となった。

その結果、67症例(28%)で臨床症状を有するインヒビターを発症し(44例は高力価)、インヒビターが碓認された投与日の中央値は10日であった。
初回投与年齢と、インヒビター発症との間には相関は見られなかった。
最も強力に製剤が投与が行われた年齢や手術が行われた年齢と、インヒビター発症との間には相関がみられた(相対危険度はそれぞれ、1.6、2.7)。
また、製剤投与間隔が短いほど、インヒビター発症は高率となった。
製剤投与量とインヒビター発症の間にも関連がみられたが、条件を適合させるとこの関連は消失した。

以上、初回治療の重症血友病Aにおいては、製剤による強力な治療を行う年齢とインヒビター発症の間に関連があるものと考えられた。
ただし、初回製剤投与年齢とインヒビター発症との間には関連はみられなかった。

※インヒビター発症について、やっと医療者から重大な治療関連副作用との発表が出た。
2年前位から厚生労働省症に対し、医薬品副作用被害対策室や血液対策課あるいは医薬品医療機器総合機構を通じて、副作用として対応を考えるよう言及してきた。
対策室や機構は対象としての認識を示したが、世界の実態などからもますます救済が急がれる状況となってきた。


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#921
【血友病&インヒビター】
“血友病B患者のインヒビター発症について、Aに比べ発症率が低いため関心が薄い。
診療レベルの向上と国際的共同研究の必要性を指摘”

タイトル:Inhibitor deveiopment in haemophilia B:an orphan disease in need of attention.
著者名:DiMichele D.
雑誌名:Br J Haematol 138: 305-315,2007

要旨:
血友病B患者の1.5~3.0において第9因子インヒビターを発症することが知られている。
血友病B患者においてのインヒビター発症率が、血友病Aにおける発症率よりも低いため、インヒビター発症と患者背景や治療方法との関連、インヒビター発症の免疫学的機序に関する報告はほとんどない。

さらに、インヒビターを消失させるような治療法が成功するかどうかの予測因子、バイパス製剤の安全性や有効性についても明かにされていない。
第9因子インヒビターの診断や治療方法に関する信頼性のある検討がなされてこなかったために、アレルギー発症(抗体産生につながる)による病状悪化の原因究明は不十分のままである。

この総説では、第9因子インヒビター発症に関する疫学、自然、免疫学的機序について概説している。
また、出血の対処法やインヒビターの治療に関する特殊なアプローチについ手も言及している。
第9因子インヒビターに関連した診療レベルを向上させるためには、国際的な共同研究が必要であろう。

※ 血友病Bの治療は常に遅れているのか、遺憾なことだ。
最近も血友病Bのインヒビター発症者の食道静脈瘤処置で1億円以上のインヒビター製剤が使われた。
この処置に専門家の英知を集めようとした時、一人一人のバラバラの意見が帰ってきたと聞く。
レベルがこのような現状なので、国に集中して頑張ってもらった。
はたして処置は成功した。


◇◇◇

#919
【血友病&薬害エイズ】
“英国の血友病患者の死亡原因は、1970年以降薬害エイズ被害者が大多数、非感染血友病血友病患者の報告はほとんどない。
非感染血友病患者(中等症-軽症)の生命予後の中央値は75歳”

タイトル:Mortality rates, life expectancy, and causes of death in people with hemophilia A or B in the United Kingdom who were not infected with HIV.
著者名:Darby SC, Kan SW, Williams M,et al.
雑誌名:Blood 110:815-825,2007

要旨:
血友病患者の死亡原因は、1970年以降HIV感染症によるものが大多数であるため、HIV非感染者における報告はほとんどない。

著者らは、英国においてHIV非感染の血友病患者6018名(1977-1998年まで登録)を対象に死亡率の調査を行った(2000年1月まで追跡)。

血友病の重症度、インヒビター発症率、死亡率は、血友病Aと血友病Bとの間で差はみられなかった。
血友病重症例におけるあらゆる原因による死亡率は1977年から1999年まで変化しなかった(この間、血友病重症例における死亡率は一般人の死亡率を上回っていた)。
血友病中等症~軽症においては、あらゆる原因による死亡率は1985年から1999年まで変化することなく、生命予後の中央値は75歳であった。
血友病患者では、一般人における死亡原因と比較して、出血及び出血関連のエピソード、肝疾患、ホジキン病における死亡は多かったが、逆に、虚血性心疾患による脂肪は一般人の62%と少なかった。
その他の14項目における死因の差はみられなかった。
また、異型クロイツフェルト・ヤコブ病やその類縁疾患による死亡はみられなかった。

※血友病の一部重症例を除くと、特に製剤を頻繁に必要としない中等症や軽症の人の予後は一般と変わらないくらいだ。
薬害エイズ事件を避けられたら、多くの患者が血友病をとともに生きながら、生き続けられたのに。
日本では今月現在608人以上がHIV感染症を原因として亡くなっている。
1985-2007年の22年の間に。


◇◇◇

#930
【血友病&薬害エイズ】
“プール血漿の問題、HIVやHCV感染禍、インヒビター発症、高価格や市場独占と過去・現在の教訓を通して、将来解決すべき問題が多いことを挙げている”

タイトル:Coagulation factor concentrates:past, present, and future.
著者名:Key NS, Negrier C.
雑誌名:Lancet 370: 439-448,2007

要旨:
血液凝固因子製剤は、血友病などの疾患を有した患者においては、プール血漿を用いた治療が行われたが、多くの患者はHIVやHCVに感染した。

この感染症の教訓は、ドナーのより厳正な選択とスクリーニング、より有効なウイルス不活化処理、遺伝子組み換え製剤の開発といった、ウイルスの存在しない凝固因子濃縮製剤の開発につながった。
現在、多くの遺伝子組み換え製剤が存在しており、極めて安全性の高いものとなっている。

しかし、なお解決すべき問題としては、プリオンやその他の病原菌の感染、インヒビターの発症、ライセンス状況の差異やきわめて高価格であることによる製剤使用の国際的不均衡などがあげられる。

将来、薬理動態を改善した製剤、及び、より免疫原生を低下させた製剤が、臨床の場で普及していくことが期待されている。


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#929
【血友病&HCV】
“HCV治療、インターフェロンなどの抗ウイルス療法後15年間の追跡で、同療法を行った症例は再発もなく、末期肝疾患へ進展はなかった。
一方、治療に失敗した例では、15年後の末期肝疾患へ移行したのは13%になるとの発表”

タイトル:Antiviral therapy for chronic hepatitis C in patients with inherited bleeding disorders:an international,multicenter cohort study.
著者名:Posthouwer D, Yee TT, Mauser-Bunschoten EP,et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 5:1624-1629,2007

要旨:
C型肝炎ウイルス(HCV)は、血友病患者において重大な問題となっている。
しかし、抗ウイルス療法の効果及び長期経過観察に関する報告はほとんどない。

著者らの研究の目的は、インターフェロン(INF)を基本とした治療のHCVへの効果を評価すること、末期肝疾患(ESLD)への移行の有無を検討することである。

HCV感染を伴った血友病295例が登録され、治療効果は継続したウイルス学的な反応(SVR)で評価した。
HIV感染のない症例(n=235)では、SVRはINF単独療法29%(29/101)、INFとリバビリンの併用療法44%(33/72)、ペグ化INFとリバビリンの併用療法63%(39/62)であった。
一方、HIV感染のある症例(n=60)では、上記の順に、7/35(20%)、1/2(50%)、11/23(48%)であった。
SVRは(HCV遺伝子型タイプ)genotype2&3で高く(OR 11.0)、INFとリバビリンの併用療法(OR 3.7)、ペグ化INFとリバビリンの併用療法(OR 4.2)でも高かった。
抗ウイルス療法後15年間の追跡では、SVRのあった症例における再発はなく、末期肝疾患(ESLD)へ進展したものもみられなかった。
一方、治療に失敗した例においては15年後のESLDへの進展は13.0%であった。

以上、抗ウイルス療法に成功することが、ESLDへの進展を減少させるものと考えられた。

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